たびたび騒がれることがある私有地駐車。警察は原則として民事上の問題であるとして、関与しません。これはやはりザル法とも言えなくはないだろう。
ザルである所以
法律上、自立救済禁止の原則が謳われています。もちろん当たり前な話ですが、全てを自力救済しているようであれば、実力行使が正義となってしまいますから当然ともいえるでしょう。
私有地の駐車問題を見ていきましょう。
私有車に無断で駐車をされた場合、私有地の所有者は何ができるか。そう、自力救済はできないわけです。
当然のことながら、原則レッカー移動はできませんし、タイヤロックもダメです。障害物を置くのもダメ。張り紙で注意するにしても、塗装がはがれないように、粘着物が残らないようにしなくてはいけません。結局何もできないのです。そもそも「迷惑駐車」「私有地駐車」のように他人の土地に無断で駐車する行為に対して法律がない以上、民法上の「不法行為」として争うことになってしまいます。
できるとしたら、「不法行為」として妨害排除請求・損害賠償請求する訴えを起こすこと。そのぐらいしかありません。損害ですから、他の駐車場に止めたからお金を支払った額レベルです。大した額ではありません。
刑法130条の住居侵入罪は、住居に限定しているので青空駐車であれば使えません。
(住居侵入等)
刑法(明治四十年法律第四十五号)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
不法投棄であれば、法律があるため警察も動くでしょうが、駐車であり動産である以上、廃棄物ではないですし警察も動かないわけです。
車両保管法でも、禁じているのは道路への駐車ですので、他人の私有地に無許可で止めることを禁じているわけではありません。
(保管場所としての道路の使用の禁止等)
自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和三十七年法律第百四十五号)
第十一条 何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない。
2 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一 自動車が道路上の同一の場所に引き続き十二時間以上駐車することとなるような行為
二 自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上駐車することとなるような行為
理想を考えよう
自力救済は、トラブルの元ですから、私有地の所有者がやっていいという形でのルール作りは目指すべきではないです。
そもそも悪いのは、駐車した側であって、土地の所有者ではないはずです。所有者が勝手に移動させてはいけない、というところを是正したい。
自動車の場合は、免許証を持っていることは大きく、道路交通法を変えに行くのがセオリーな気がします。結局は、運転者の意識の元に駐車しているわけですし、警察が動きやすい。
放置駐車違反は、車の持ち主である使用者に納付命令が行きますから、ここにとっとと組み入れてしまうべきでしょう。警察が来て、現況を見て、赤切符を貼るだけですからそこまで大きな変更ではないはずです。
そもそも、「私有地に無断で駐車すること」を法律で禁じることによって不利益は誰も被りません。現状抑止力すらないのですから、まず第一歩としてはここの法整備化を訴えるべきだと思うのです。
道路交通法は道路がメインなので、現実的ではないでしょうが、「その他の交通の安全と円滑」「道路の交通に起因する障害の防止」は謳われています。「たとえ,私有地であつても,不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は,同法上の道路であると解すべきである」という判例からして、人が入れるようになっている以上、道路交通法で定めても問題ないでしょう。
法的に違反であることすら定義できないと、やはり移動させる、排除することは難しい。違反駐車であれば、警察が移動をすることは認められているわけで、私有地も同様であるべきであろう。
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