出場「時間」記録がないラグビー
ゲームクロック制で行われる競技でありながらも、出場「時間」記録は公式上存在しない。交代が自由なバスケットボール(秒単位)やサッカー(分単位)で記録されるのと比較すると、ラグビーにおいては、出場試合は「キャップ数」として記録される一方、時間というものは現時点で記録されていない。
ラグビーは、サッカーとは異なりHIAによる一時的な交替や、イエローカードによる一時退場があるため戦術的以外による出場時間の増減がある。といっても「キャップ数」しかカウントされなかったのは近年までそもそも戦術的な入替がルール上存在しなかったから「時間」という記録の価値がなかったのだろう。
国際ルールで見れば、1968年に負傷による2名までの交代が認められるようになったが、戦術的な入替が導入されたのは96年でありまだ30年経っていない。現在のスコッドが23名になったのは2009年のことである。
そう、2003年にリーグワンの前身である「トップリーグ」が開幕したころは、まだスコッドは22名であったのだ。(13-14シーズンから23名スコッド)とはいえ、交替自体の数はトップリーグ初年度からリザーブ7名が出場している試合は存在しており、国内競技規則の変遷が案外ネットに転がっていないので何とも言えないが、交替自体は行われていた。しかし3人の交替のみという試合もそれなりにあるのも事実で、現在におけるラグビーとは似て非なるものといえるのかもしれない。
ただし、現在行われているリーグワン、ラグビーユニオンの試合においては23名スコッドで、23名全てが出場するのがほとんどである。もちろん出場しない選手がいるのもまた事実であるが、ほぼ大半の試合では交替する。(試合メンバー確定後に負傷で登録から削除されて22名で行うこともあるが)
つまり選手交替が行われる以上、試合に出場したかという評価軸以外に、その選手が何分出場したかという指標も必要性があるように感じるのだ。
ただし、現時点の公式試合記録においては評価ができないものである。
公式試合記録の現状と課題
交替・入替・一時交替
公式試合記録の現状を見てみよう。選手の出場記録は、「交替/入替」「一時交替」「カード/処分」を見るだいたいが分かる

ラグビーは1~15番の選手が先発出場をする。そのうえで順番に交替・入替・一時交替・カードを見ていけばだいたいの出場時間は計算できる。といっても分かりにくい。そもそも交替(HIA)と一時交替(HIA)の違いなどもはや謎にすら見えてる。
ここで競技規則を見てみよう。
「交替」:負傷した場合は交替してよい。一度交替したら試合に再び加わってはならない(3.21)
「一時的交替(出血)」:出血を伴う負傷の場合一時的交替が認められる。ただし15分以内に戻れなければ正式な交替となる(3.25)
「一時的交替(脳震盪)」:頭部外傷の評価を受ける必要があるプレイヤーは一時的交替が適用される。12分以内に戻れない場合正式な交替となる(3.27)
一時的交替は交代要員がすべて出場しいてもできる。(3.28)
一時的交替により出場しているプレイヤーが負傷したとき、さらに交替はできる(3.29)
一時的交替により出場しているプレイヤーが退場・一時的退出したとき、元々退出していたフレイヤ―は3.19・3.20を除いて戻れない(3.30)
一時的交替の時間がハーフタイムにかかる時、後半開始時に戻れないときは正式な交替となる(3.32)
またアンコンテストスクラムの項に
- 最前列の選手にイエローカードが出され、すでにフィールド上にいるセンスとスクラムができない場合、別の選手を指名して退場させ、最前列の選手が出場する(3.19)
- 最前列の選手が退場となり、すでにフィールド上にいるセンスとスクラムができない場合、別の選手を指名して退場させ、最前列の選手が出場する(3.20)
とあり、イエローカードやレッドカードによる一時的交替はこの項に該当する。
と、「交替」「一時的交替」は割と競技規則に出てくるが、「入替」は出てこない。英語だと「REPLACEMENT」でしかない。おそらく戦術的交替(TACTICAL REPLACEMENTS)を「入替」と表しているとみるべきで、上記の例でも入替で試合に出なくなった後、一時交替で再出場している。
この競技規則は統一団体である「ワールドラグビー」が日本語版も含めてリリースされているが、自動翻訳されたようなものであって日本語的に揺れがあるとみるべきか。
ワールドラグビー競技規則の3.33は「戦術的に交替されたプレーヤーは、以下のプレーヤーと替わる場合に限り、プレーに戻ることができる」という文言でありここでもまた「交替」となっているが、JRFUが発行しているU15競技規則の3.34には「戦略的理由で入れ替わったプレーヤーは、他にリザーブ選手がいない場合には、負傷したプレーヤーの交替として、その試合に再び加わることができる。」とあり、JRFUが「入替」と称しているのは「戦術的な入れ替え」と解釈するべきなのであろう。
これですべてが丸く収まり、全てのプレイ時間が分かるかといわれるとそうではなく特記事項に次のような記述が存在することがある。

出血を伴ない負傷による退出は一時的交替の対象となるわけではないため、戦術的な交替(入替)枠を使い切っている場合はそのまま退出する。しかし、このリーグワン(というか日本協会)のフォーマットにおいて負傷退場は特記事項に書かれるだけであり、上記の交替・処分欄には記述されない。
また、同様にアンコンテストスクラムの選択的退出も特記事項の記述のみである。基本的には、誰かが新たに入らないと一時的交替には記述してくれない。(ただし記録チームによってはたまに記述される)
※退出は以下のように記述されることもあるが、負傷退場の時にしか基本的に記述されない。

カード・処分とあるが、全てが記述されるわけではない
近年の公式試合記録において、イエローカード2枚によるレッドカードは特記事項欄に書かれるだけであって、カード・処分欄には記述されない。

もう今となっては見れないが、トップリーグ時代に種類「累積」と書かれていたり(①、②、③)、レッドカードで内容が「イエローカード2枚」と書かれていたり(①)もしたが、近年は事後処分に関しては、公式試合記録には記述されない。遡ると「出場停止」の記述も公式試合記録に2015年末までは存在していたが、リーグワンになってからはHP上でお知らせとして発表される。
といったように、gameno(URLの数字)の1が、トップリーグの1試合目であり、当時は全てこの欄で運用していたのだろうが、今となってはここは「カード」の一部を記述する欄に他ならない。
このイエローカードが累積2枚でレッドカードが提示されても記述されない現象は、HPやスポナビで提供される試合経過に影響する。


上記の画像の通り、イエローカードが2枚提示されているものの、その選手が2枚でレッドカードが提示されたことがぱっと見で分からないのだ。
イエローカード2枚目で退場となるサッカーのスポナビ・Jリーグ公式の表記は以下の通りであり、視覚的にわかりやすい。(J公式は少しわかりにくい気もするが)


もちろん、昨シーズンから導入された20分レッドカードであったりと、表現のしにくさがあるのは否めないが、如何せん分かりにくいのだ。
ところで、出場時間の観点で見ると、一時的退出の戻るタイミングは「10分丁度」であるという保証がないという点に留意しなければならない。フロントローであれば、スクラムのために一時的交替が認められている場合があるように、当然プレーが途切れない限り再度試合に加われないと競技規則上は以下の文面から解釈できる。
3.7 レフリーの許可を得ないままプレーヤーが再度試合に加わった、または、交替要員が試合に加わり、そうすることによってそのプレーヤーが利益を得ようとしていたとレフリーがみなした場合、そのプレーヤーは不行跡を犯したことになる。
ただし、イエローカードによる一時的交替がある場合は公式記録に記載される一方で、それがない場合はどのタイミングで試合に再度復帰したかは、現地で試合を見るほか確かめる方法はない。必ずしも試合に加わるタイミングでカメラが映すというわけではないため、中継映像では正確な時間は担保できない。
何分まで実施されたかは分からない
ここにも問題がある。ラグビーにおいて、40分を超えた時間はどう表現するのかという問題が付きまとう。タイムキーパー制であるリーグワンでは、40分を超えた時点でプレータイムは40分完了しているのだ。
このような記録は、どこもとっていないから問題とならないのだろうが定義しないと、実はできない。
実際に集計するならばサッカーのアディショナルタイムと同様に考えるべきなのだろうか。ただし、40分を超えてペナルティで止まっている最中に交替した場合に「39分」となってしまう。
ただ、タイムキーパー制で現在の技術で言うならば別に秒単位まで記録があっても、いいのでは?と思わなくもないところではある。
見やすさ・わかりやすさはアップデートを
リーグワンになり、興行に振り始めたといってもチーム体制、試合実施に変化が多少みられるだけで何も変わってないといってもよい。特に記録面においては、2002年からほぼ同じフォーマットを使い続けているのだ。
そしてその表現方法がフェーズ2が始まった現時点においても何ら改善はされていない。
イエローカード累積3枚で出場停止になりうるが、特段カードが与えられた一覧が提示されるわけでもない。(Jリーグは一覧化されている)
中継映像にしても、Jスポーツは国際試合だと一時的退出の残り時間を表示したことはあるが、リーグワンでは表示されないし、前述の通り試合速報を提供するサイトでは、イエローカード2枚はレッドカード表記とならないのだ。
世界を謳うリーグならば既存の表現に留める必要もないだろう。もちろん表彰対象は累計であり続けるとは思う。ただし、多角的な見方を増やすのであれば、出場時間当たりのタックル数・ゲインメーターという指標があってもまた新たな見方が増えるのではないだろうか?
果たして今の現時点の状態は、リーグアイデンティティに掲げる「世界最高の名に相応しいクオリティ」と言えるのだろうか。本当にそれを目指す意識はあるのだろうか。甚だ疑問でならない。

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