Twitterで少し(?)盛り上がったのでまとめてみる。
テクニカルファウルの規定
第36条にテクニカルファウルの定義がある。
36-2-1 テクニカルファウルは、相手チームのプレーヤーとの体の触れ合いのない振る舞いであり以下が該当するが、これらに限るものではない:
2022 バスケットボール競技規則、pp.53-54
・審判からの警告を無視する。
・審判、コミッショナー、テーブルオフィシャルズ、相手チーム、あるいはチームベンチに座ることを許可された者への敬意を欠く振る舞い、異論表現。
・観客に対して無作法に振る舞ったり挑発したりする、あるいは煽動するような言動をとる。
・相手チームのプレーヤーを挑発したり侮辱したりする。
・相手チームのプレーヤーの目の前で手を振ったり、手をかざしたりして視野を妨げる。
・肘を激しく振り回す。
・バスケットを通過したボールに故意に触れる、またはボールが素早くスローインされるのを妨げてゲームの進行を遅らせる。
【補足】審判にボールを返さずにゲームの進行を遅らせるような行為等も上記項目に該当する。
・フェイク(ファウルをされたと欺くこと)。
・リングをつかんで体重をかける。ただし、ダンクショットのときにやむを得ず瞬間的にリングをつかむことは差し支えない。また自分や他のプレーヤーが怪我をするのを避けようとしたと審判が判断したときは、リングをつかんでもテクニカルファウルとはしない。
・最後のフリースローでボールがリングに触れる前にゴールテンディングのバイオレーションをしたときは、オフェンスのチームに1点が与えられ、さらにそのディフェンスのプレーヤーにテクニカルファウルが宣せられる。
36-2-2 チームベンチに座ることを許可された者によるテクニカルファウルは、審判、コミッショナー、テーブルオフィシャルズ、相手チームに対して失礼な態度で接したり、体に触れたりする行為、またゲームの進行や運営に支障をもたらしたりする違反のことをいう。
と、いろいろなことが書いてあるわけではあるが、コーチに該当するものは限られる。2項目目の振る舞いに関しては、前項の「36-1」に規定がある。(後述)
36-2-2は、チームベンチに座ることを許可されたものに関して言及されている規定で、これはコーチも該当する。とはいえ、この規定では、審判、コミッショナー、TOや相手チームに対して定義づけられているにすぎず、「自チーム」のプレイヤーに対して規定されるものではない。
言動や振る舞いに関する規定は以下の通りである。
36-1 言動や振る舞いに関する規定
2022 バスケットボール競技規則、p.53
36-1-1 ゲームは、両チームのプレーヤー、ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、交代要員、5個のファウルを宣せられたチームメンバー、チーム関係者、審判、テーブルオフィシャルズ、コミッショナー(同席している場合)を含むこれら全ての人たちの完全な協力によって成立するものである。
36-1-2 両チームは勝利を得るために全力を尽くさなければならないが、これはスポーツマンシップとフェアプレーの精神に基づいたものでなければならない。
36-1-3 競技規則の精神と目的に対して、意図的にあるいは繰り返し行われる非協力的な行為は、テクニカルファウルとみなされる。
36-1-4 審判は、明らかに意図的ではなくゲームに直接的に影響のない軽微な違反については、テクニカルファウルを科さずに警告を与えることがある。ただし、警告の後もその同じ違反が繰り返し続く場合はその限りではない。
36-1-5 ボールがいったんライブになってから、前に起こったこの規則に該当する違反が見つかった場合は、見つかったときにテクニカルファウルがあったものとして処置をする。
この規則に該当する違反があってからそれが見つけられるまでに起こったことは、全て有効である。
結局のところ、コーチの行いに関して直接的に書かれているわけではない。しいて言うならば「36-1-3」の競技規則の精神と目的に対して非協力的かどうかは気になるところではある。
ただ、テクニカルファウルの条文には、コーチがインプレ―中に自チームのプレイヤーに触れることに関しては言及がないといえよう。
コーチがしてもよいこと
そもそも、コーチがしてよいことは何だろうか。これは第7条に規定されている。
7-3 チームベンチに座って、チームベンチエリア内にとどまることができるのは、ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、交代要員、5個のファウルを宣せられたチームメンバー、チーム関係者だけである。競技時間中、全ての交代要員、5個のファウルを宣せられたチームメンバー、チーム関係者は着席していなくてはならない。
2022 バスケットボール競技規則、pp.18-19
7-4 ゲーム中、ヘッドコーチあるいはファーストアシスタントコーチは、ボールがデッドになりゲームクロックが止められているときのみ、スコアラーズテーブルに行きスタッツの情報を得ることができる。
7-5 ゲーム中、ヘッドコーチは、ボールがデッドになりゲームクロックが止められているときのみ、審判に礼儀正しくコミュニケーションをとることができる。
7-6 ヘッドコーチとファーストアシスタントコーチは、一度にどちらか1人であればゲーム中に立ち続けることを認められている。チームベンチエリア内であれば、ゲーム中にプレーヤーに話しかけることができる。
ファーストアシスタントコーチは審判とコミュニケーションをとってはならない。
【補足】ヘッドコーチとファーストアシスタントコーチは、両者が同時に立ち続けることは認められない。
ここで注目するべきところは「7-6」であろう。そう、コーチがゲーム中にしてもよいことは「チームベンチ内で、プレイヤーに話しかけること」に限定されている。
FIBAルールを見てみると、「7.6」は以下のようになっている。
7.6 Either the head coach or the first assistant coach, but only one of them at any given time, is permitted to remain standing during the game. They may address the players verbally during the game provided they remain within their team bench area. The first assistant coach shall not communicate with the referees.
2022 OFFICIAL BASKETBALL RULES、p.17
「They may address the players verbally during the game.」となっている。「verbally」とある以上、口頭で指示をすることが許可されていると考えるのが自然だろう。
つまり、この条文をみると「コーチがゲーム中に、自チームのプレイヤーに触れて指示を出すこと」は反していそうだ。
とはいえ、この第7条に直接的に罰則規定は定義されていない。
2015年ルール
2018年に競技規則は大きく書き換えられたわけであるが、その前のルールでは以下のように規定されていた。
7.5 コーチあるいはアシスタント・コーチのうち1人だけは、ゲーム中、チーム・ベンチ・エリア内で立ちつづけることが認められる。
2015~ バスケットボール競技規則、p.21
両者(コーチあるいはアシスタント・コーチ)は、1人ずつであれば交互に立ちつづけることも許されるが、両者が同時に立ちつづけることは認められれない。
両者(コーチあるいはアシスタント・コーチ)は、チーム・ベンチ・エリア内からであれば、ゲーム中、自チームのプレイヤーに話しかけたり指示を与えたりしてもよい。
ただし、アシスタント・コーチは、ゲーム中、審判に対して話しかけたり、そのほかいかなるはたらきかけもしてはならない。
と、話しかけることと指示をすることが並列で書かれているのは興味深い。当時のFIBAルールは不明であるが、「口頭の指示(話しかける)」ことが明記されている今よりも、よりリーガルな印象を受ける。
介助
第5条に「介助」が定義される。怪我をしたときのプレイヤーの処置に関する規定である。ここにはコーチをはじめとするチームベンチに座ることができるもの(一時はチームベンチ・パーソネルとされていた人々)に関する規定として「5-4」がある。
5-4 ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、交代要員、5 個のファウルを宣せられたチームメンバー、チーム関係者は、審判が許可をしたときに限り、怪我をしたプレーヤーを介抱するためにコートに入ることができる。
2022 バスケットボール競技規則、pp.18-19
チームベンチに座ることが許可されたものは、そもそもチームベンチを離れてはいけないので、審判の許可が必要なのは当然ではある。「コーチがゲーム中に、自チームのプレイヤーに触れること」を介助と見なすのであれば、明らかにイリーガルなものとなりえそうではある。
ただし、チームベンチエリア内で介助をすることは認められており、コーチがチームベンチエリア内でする場合は、真っ黒かといわれるとそうでもないようにも見えてくる。インタープリテーションに第5条の解説があるが、いずれもプレーが止まっているときについての話であり、インプレ―中には言及されていない。
5-6 例:チーム A のチームベンチエリアの近くで B1がショットの動作(アクトオブシューティング)中のA1にファウルをした。ボールはバスケットに入らなかった。A1が 2 本もしくは 3 本のフリースローを行っている間に
2022 バスケットボール競技規則、p.120
(a)チーム A のマネージャーあるいは A 6 がチームベンチエリアから、コート上のいずれかの自チームのプレーヤーに、タオル、飲み物のボトルもしくはヘッドバンドを渡した。
(b)チーム A の理学療法士がチームベンチエリアから、コート上のいずれかの自チームのプレーヤーの緩くなったテーピングの補強、脚へのスプレー、もしくは首へのマッサージなどを行った。
解説:どちらの場合においても、速やかなゲームの再開に遅延をきたしていないことから、チーム Aのプレーヤーは介助を受けたとはみなさない。このチーム A のプレーヤーは交代する必要はない。A1は引き続き 2 本もしくは 3 本のフリースローを行う。
5-7 例:チーム A のチームベンチエリアの近くで B1がショットの動作(アクトオブシューティング)中のA1にファウルをした。ボールはバスケットに入らなかった。ファウルの後、A1は自チームのチームベンチエリア内に倒れてしまった。A6は立ち上がって A1が起き上がるのを助けた。A1は遅くとも約15 秒以内で、速やかにプレーすることができた。
解説:速やかなゲームの再開に遅延をきたしていないことから、A1は介助を受けたとはみなさない。A1は交代する必要はない。A1は 2 本もしくは 3 本のフリースローを行う。
5-8 例:A1は 2 本のフリースローを与えられた。審判がスコアラーズテーブルにファウルのレポートを行っている間に、A1はコートの遠端の自チームのチームベンチエリアの前に行き、タオルもしくは飲み物のボトルを渡すように頼んだ。チームベンチエリアのいずれかの人物が A1にタオルもしくは飲み物のボトルを渡した。A1は手を乾かした、もしくは飲み物を飲んだ。A1は遅くとも約 15 秒以内で、速やかにプレーすることができた。
解説:速やかなゲームの再開に遅延をきたしていないことから、A1は介助を受けたとはみなさない。A1は交代する必要はない。A1は 2 本のフリースローを行う。
5-9 例:A1がフィールドゴールで得点した。スローインを行う B1は審判にボールが濡れていることを伝えた。審判はゲームを止めた。チーム B のチームベンチエリアのいずれかの人物がコートに入り、ボールを乾かした、もしくは B1がボールを乾かすためにタオルを渡した。
解説:いずれの場合においても、速やかなゲームの再開に遅延をきたしていないことから、B1は介助を受けたとはみなさない。B1は交代する必要はない。ゲームはバックボードの真後ろを除いたエンドラインの外の任意の位置からチーム B のスローインで再開する。審判はスローインのためにチーム B のプレーヤーにボールを渡す。
5-10 例:A1はフロントコートからのスローインで、両手でボールを持っている。チーム A の理学療法士はバックコートの自チームのチームベンチエリアを離れ、コートの外から A1のテーピングを補強した。
解説:チーム A の理学療法士は自チームのチームベンチエリアの外で A1を介助している。A1は交代しなければならない。
5-11 例:チーム A のフロントコートからのスローインで A1 はまだ手にボールを持っていない。チーム A の理学療法士はフロントコートの自チームのチームベンチエリアにとどまったまま、A1のテーピングを補強した。
解説:チーム A の理学療法士は自チームのチームベンチエリアの中で A1を介助している。介助が 15 秒以内に完了した場合、A1は交代する必要はない。介助に 15 秒以上を要する場合、
A1は交代しなければならない。
競技規則の精神と目的
結局は、「競技規則の精神と目的」とはなにかに行きつくように思う。競技規則のまえがきには、以下のような記述がある。
しかしながら実際のゲームの現場で、何が規則の精神と合致するのか何が公正であるのかなどあらゆる具体的な問題に直面したとき、何によって公正と不公正とを区別すべきかということになると、いかに我々が円満な常識と強い意思をもちつづけていたとしてもただちに明らかになるとはいえない。ここにこそこの規則の存在意義がある。
2022 バスケットボール競技規則、p.2
それは一言一句も軽視することのない文字どおり規則の章条に忠実であろうと努めることによってのみ理解される。審判は瞬間的なプレーに対して正しい規則の適用を要求されている。また、近年バスケットボールの競技規則が改正されるごとに、ますます審判の判断に基づいて判定することが競技規則により明確に要求されるようになってきている。したがって審判が規則を把握するには、単に規則をよく読み規則を覚えるということだけではなく、体験的に理解を深める必要がある。もちろん規則は文字を借りて表された意思であるから行間にその意思をくみ取らなくてはならない。そのうえで自分流の解釈を施すことなく、白紙の心境で字句そのままの意義を受け入れる態度をもちつづけることによって、はじめて行間の規則の精神を誤りなく身につけることができるのである。
競技規則のの文面だけでなく、行間の意思も含まれるらしい。結局はよみとれ、ということらしい。ただし、そこに自分流の解釈があってはいけない。結構難しいような。
例えば、ラグビーの競技規則には、ラグビー憲章があり、精神やゲームの原則が謳われている。サッカーの競技規則は、「サッカー競技規則の基本的考え方と精神」が書かれている。バスケは、というと日本の競技規則は「まえがき」があるがこれはJBAが付加しているものでFIBAルールにはない。
バスケで似ている所とすると、第1条でゲーム(試合)について定義はされている。
1-1 バスケットボールゲーム
2022 バスケットボール競技規則、p.7
バスケットボールは、それぞれ5人ずつのプレーヤーからなる2チームによってプレーされる。
それぞれのチームの目的は「相手チームのバスケットに得点すること」および「相手チームが得点することを妨げること」である。
ゲームは、審判、テーブルオフィシャルズ、およびコミッショナー(同席している場合)によって進行される。
ここに、コーチは介在していない以上、「7-6」で認められる「プレイヤーに話しかける」以外の働きかけはしてはいけないと解釈してもおかしくはないようには思う。
と考えると、定義されてはいないとはいえ、コーチが直接体に触れてプレーを指示することが、「競技規則の精神と目的に反していうると判断するのであれば、テクニカルファウルと見なすことはできそうだ。意図的ではれば1発テクニカルファウルは可能であり、そこは審判の裁量にゆだねられるところではあろう。「プレイヤーに触れる指示」が明らかに意図的ではないとは言えないように感じるところではあるが、ゲームに直接的に影響を与えていると判断できるかは微妙な点もあるところではある。
36-1-3 競技規則の精神と目的に対して、意図的にあるいは繰り返し行われる非協力的な行為は、テクニカルファウルとみなされる。
2022 バスケットボール競技規則、p.53
36-1-4 審判は、明らかに意図的ではなくゲームに直接的に影響のない軽微な違反については、テクニカルファウルを科さずに警告を与えることがある。ただし、警告の後もその同じ違反が繰り返し続く場合はその限りではない。
結論
「7-6」で認められている行為以外をしているため、正当な行為ではない。
「36-1-3」の規定を根拠に、「テクニカルファウル」を宣することは不可能ではない。
現実的な落としどころは、警告?

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