今回のワールドカップの特筆するべき事象は、さまざまなメディアが記事を出しているように”アディショナルタイム”が非常に長いことだろう。コアなファンな人からすると知るかって言われそうだが、書き記そうと思う。
「ランニングタイム」は容易ではあるがわかりにくい。
サッカーのようないわゆる「ランニングタイム」は容易なシステムだ。試合開始のホイッスルと同時に計測をし始めるだけでよい。アディショナルタイムの管理は主審の時計で行うわけで、計測係すらいらないともいえる。トップレベルであればサポートしている人はいくらでもいるわけではあるが、どの環境下でも同じように行えるシステムといえ、容易であるといえよう。
しかし、これはわかりにくい。もちろん慣れている人からすれば大した話ではない。2つ例を挙げよう。
アディショナルタイムにおける中断は、主審が決めるだけで観客に伝わらない
なんとなくはわかるし、別にそこまで神経質になる必要なんてないのかもしれない。
しかし、タイムキーパー制のスポーツに慣れ親しんでいる人からすると少しもどかしいし、わかりにくい。そもそも提示される時間は”目安”であるし、アディショナルタイム中に中断されてしまえば、追加されることもある。ただそれは主審がコントロールするものであって、観客側は知る由もないのだ。(そもそも最初の提示も”目安”で出されるにすぎないが)
もちろん市井で行われるサッカーであればさほど問題はないと思う。市井のサッカーであれば選手と審判の会話でコミュニケーションをとって進めればいいのだ。プレイヤー目線で言えばそれだけで簡潔する話であり、さほど問題もない。ただ、プロスポーツとして興行が行われているものとしてはどうなんだろう。応援している人がいつ終わるのかをひやひやしながら見守るのもサッカー文化といえるのかもしれないが、はっきりとしないように思う。
VARが導入され、プレーですら事後的に検証するようになったのに何かしっくりこない。
記録が分かりにくい
イングランドーイラン戦の前半の14分のアディショナルタイムがあったので記録を考えてみよう。
例えば、アディショナルタイムの10分台でゴールを決めた場合、「前半45+11分」と記録される。14分追加されたうちの11分経過なので残り3分。プレイングタイムで考えると42分ごろに決めたといえよう。
ただ、この”アディショナルタイム”が何分だったかというのは特段目にすることはない。アディショナルタイムが14分ある中で「45分にゴールを決めた」。果たしてこれはその次元のいつなんだろう。そう思わないだろうか。
プレイングタイムで考えると31分。そうなると中盤~終盤のはじめみたいな時間帯なような気もしてくる。でも「45分」という伝えられ方をした場合、終盤ぎりぎりの印象を受けてしまうように思うのだ。
やはりこうやって考えてみるといささか正確性を欠くように思えてならないのだ。VARというテクノロジーを導入してまで正確性を求めたのに、そこは適当でいいの?と思ってしまうのだ。
ランニングタイム制を維持しているのはサッカーだけ?
もちろん一般に行われるレクリエーションではランニングタイムが使われることがあるだろう。部活やクラブでも練習試合的なものであれば、正式には止めるけど進行上ランニングタイムを使うみたいな。
私は、中学時代バスケットボールをやっていたが、市内の大会は第4クォーターの残り2分まではランニングタイムとかだったように思う。バスケの場合は、笛が鳴ると時計は止まる。ゴールが決まった後も第4クォーター以降の時計が「2:00」を指した後は時計が止まる。これは完全なるプレイングタイム制だろう。
ラグビーもタイムキーパーが導入されていない場合は、追加時間(ルールブック上は「失われた時間」)を行う。レフリーが時間の管理を行うこととされているが、タイムキーパー制の場合はその時計で試合を行うといってよいだろう。ブザーが鳴った後に、ペナルティ以外でプレーが途切れた場合に試合が終わることとなる。日本のトップカテゴリでの導入は2007年なのでまだまだ新しいルールだ。国際ルールだとタイムキーパーの存在が認められたのが2000年で、この2000年からTMO(ビデオ判定)システムが導入された。(参考)と、ラグビーはオープン化したのが最近でそこから大きく変わったものともいえよう。(とはいえ、トップカテゴリや大学日本選手権ではタイムキーパー制だが、関東大学対抗戦なんかだとランニングタイムで行われている)
サッカー協会管轄のフットサルもタイムキーパー制だ。第7条の試合時間として
1. プレーのピリオド
https://www.jfa.jp/laws/futsal/2021_22/
試合は、プレーイングタイムで20分間の同じ長さからなる2つのピリオドで行われ、競技会規定で認められる場合のみ、短縮することができる。
とあり、「プレーイングタイム」で行われることが明確にうたわれているのは、サッカーを意識しているようにも見える。
ハンドボールは、審判が時計を止めない限りは計時を止めないし、追加時間を与える制度はない。システム的にはタイムキーパー制が導入されたラグビーのようなものだろう。
アメフトは、時間が止まるプレーと止まらないプレーがあるので理解はしにくい。ただ、時間が止まらないプレーがあるといえ、時間が追加されることはない。
追加時間を設ける競技はサッカーとラグビーぐらいだったのに、そのラグビーが辞めつつあるのだからもはやサッカーにしかない制度ともいえるのかもしれない。
サッカーには計時を止めるという制度がないので、何があろうとも時間は動き続ける。しいて言うなら野球の試合時間はランニングタイムといえるかもしれないが、イニング制なのであまり関係があるものではない。(とはいえ、2011年、12年に導入された3時間半ルールは、試合開始時刻からの時間でコントロールしていたのでランニングタイム制と言えるだろう。)
サッカーも変わりうるのか
ラグビーが大きく変わったのは、オープン化とビデオ判定の導入だろう。主審がコートにいて副審が両サイドにいるというシステムもサッカーと似ている。ただ、そもそものルールとして規定時間を過ぎた後に「プレーが途切れたら終了する」ということが明確に決まっていたラグビーとそうではないサッカーという違いはあるのだろう。
サッカーにも2014年のゴールラインテクノロジー、2018年からVARとテクノロジーが導入されるようになってきた。しかしこれはすべてのサッカーに対して導入されているわけもなく、トップカテゴリの話である。
現代のスポーツは興行である。結局見ている人が分かりやすいということは一つの大事なファクターだろう。VARや半自動オフサイドテクノロジーという最先端技術を導入する試合においても「ランニングタイム」を維持し続けるのはあまり整合性がないように思えてならないが、サッカーにそぐわないのだろうか。
もちろん「サッカーらしく」「フットボールらしく」いい感じのタイミングで主審が終了する権限を持つことは必要だろうが、最新技術がたくさんに使われているトップカテゴリでさえも「ランニングタイム」を維持し続ける必要はもはやないように思えてならない。


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