複数クラスレースは結局わかりにくい。あれは中継泣かせだし、すべてを終えるわけではないから難しいのだ。スーパー耐久もWECもそうだ。そこをどう伝えられるかが中継なんだろうけど、なかなか難しい。
GT500とGT300は同じルールでレースをしている事実
そう。同じレースをしているのだ。当たり前じゃないかといわれるかもしれない。
同じレースというのは、先頭車両が別にGT300の車でもいいのだ。
実際、ほぼ可能性がないに等しいだろうが、300kmレースでGT300が300km走り切るレースだってルール上成り立つのだ。
SUPERGTスポーティングレギュレーション第39条「レースの終了」には以下のようにある。
「レース終了は、フィニッシュラインを基準として管理される。(省略)レースの終了の合図は、先頭車両が当初のレース距離もしくはレース時間を走行し終わった時点で直ちに提示される。」
そう。この文面のように先頭車両はGT300、GT500と限定されているものではなく、規定の周回か時間を走り切った先頭車両(最も走っている車)が最初にチェッカーを受けるのだ。
もちろんこんなことが起これば、GT500のすべての車両にトラブルが起きなければありえないし、GT300も先にGT500がフィニッシュすることを見越して周回数を見積もってガソリンを搭載するので、ガス欠祭りorスプラッシュゴーが頻発することになるのは言うまでもないが。
と、ここまでが前提で理解するべきなのだ。そうすると、ドライバー交代や運転時間規則も分かりやすくなるはずだ。
競技会(レース)ごとにオーガナイザー(主催者)が告知しなければいけないものとして、
- 当初のレース距離もしくは当初のレース時間
- 当初のレース距離もしくは当初のレース時間の2/3に相当する周回数もしくは時間(小数点以下切捨て)
というものがある。
これは、SUPER GTスポーティングレギュレーション第35条の「最大運転距離・時間」の規定によるもので
第35条 最大運転距離・時間
1名のドライバーが総計で当初の距離もしくはレース時間の2/3を超えて運転してはならない。ただし、ドライバーの交代前にセーフティカー活動中にドライバー交替を行えなかった場合は本条の適用が免除されるが、セーフティカーの退去周にドライバー交替を行わなければならない。オーガナイザーは、当初のレース距離の2/3に相当する周回数(小数点以下切捨)、もしくは当初のレース時間の2/3に相当する時間を競技会特別規則に明記すること。
SUPER GTスポーティングレギュレーション
という規定があるために告知されるものである。
9月18日に行われた2022 SUPER GT Rd.6では、2/3に相当する周回数として「56周」が明記されているのだ。
中継では周回数は「先頭車両」しかわからない
中継では、「先頭車両」しか基本的にはわからないのだ。現地でタイミングモニタを見れる実況席やピット、または「SUPER GT Live Timing」をインストールし課金(980円/年)をする必要がある。生中継を見ている人は、Jsports4かJsportsオンデマンド(かニコ生チケット)を契約しているのにだ。
つまり、一部のガチで楽しみたい人にしか知りえない情報でしかなくて、中継画面で常に変わるのは表示され続けている「先頭車両」の周回数となる。そう、先頭車両だ。
GT500がトラブル続出にならない限り、GT300の周回数はわからないのだ。
GT300をカメラがとらえて、ラップタイムが出た時とかにたまにわかるぐらいで、そもそも今何周目を走っているのかさえ分からないのだ。
これによって引き起こされる現象として、実況・解説がGT300の周回・ルールをわからなくさせる現象がある。レースの2/3に相当する周回をGT500が走った際は、GT300はまだ達していないことが通常である。そのためレースの2/3に相当する周回をGT500が超え始めると、「GT300はもうドライバー交替をしていなきゃいけないのでは?」という勘違いを生み始めるのだ。
これは仕方がない。誰もがルールを読んでいるわけでもないし、中継に出る周回も「先頭車両」のものしかない。実況・解説も基本的にルールはあやふやなんだから、ゆるっと見ている層にはわからないし、勘違いも生まれるはずだ。Twitterでそんな感じのTweetは割と目にした。特にGT300で周回遅れになっている車両となればもはや何周かわからないので仕方はないのだが。
今回のTwitterでよく目にした事象は、ドライバー1名が前日に急病で緊急入院したために、当日1名しかいないために不安視した人がいたから起きたものだ。
ドライバー複数名レースの場合、複数いなければ規定を満たせないため、そもそも出走しないか、走れるだけ走るかの2択をするしかない。SUPER GTは、先に挙げたように「最大運転距離・時間」が定められている以上、それを超えた場合の規定は明記されていないが失格になりうるのだろう。
当然応援しているチームが走ってて、実況が「もうそろそろ入らないと……」のような言及をすれば不安がる人もいるのは当然の反応だ。
複数ドライバーのレースの欠陥?
ここで、ドライバーの変更規定についてみてみよう。「交替」ではなく「変更」。エントリーを変えたい場合の規定だ。
第16条 ドライバーの変更
1.参加申し込みが正式に受理された後のドライバー変更は、ドライバーに疾病、けが等やむを得ない事情がある場合のみとし、競技組織委員会および競技審査委員会の承認を得なければならない。
SUPER GTスポーティングレギュレーション
2.ドライバーの変更が許される期限は、競技会初日の参加確認時までとする。
3.(省略)
競技である以上、当然の規定であろう。エントリー期限がありそれ以降は変更できない。
それは、当然の流れだ。そしてそれが競技会初日に設定されているのは、ある意味で普通の流れであろう。
しかし、「興行」という側面に目を向けると果たしてどうなのだろうか。
もちろん2日目だけ代行を立てるなんて、場所によっては不可能なのかもしれないが、走行できる環境があるのであれば、走った方が盛り上がれるのではないだろうか。チケットは事前販売が多いだろうからそれによって売り上げが増減することはないのかもしれないが、戦える状態で走るチームがいればいるだけ「興行」としてはありなような気もしてくる。
レースというものは事故もありうる。もちろん怪我をする可能性だってあるのだ。怪我をするようなクラッシュが起きれば、基本的には車も無事ではないだろうからそのままリタイヤすることが多いようには思うが、もし車が無事だった場合はどうだろうか。車が無事で、1名はドライバーがいるのにリタイヤするのは、なにかもったいないような気がしてしまう。
(ちなみに、第3ドライバーが許される競技会の場合は、1名が欠けても2名が乗るので最後まで走り切れる。)
もちろん出走して、2/3を走行すればGT300であればほとんどのレースでは、チームポイントが1はもらえる。それはたまたま完走扱いになる70%の周回と、2/3の周回の関係上起こりうるものなので、GT500の場合はどうあがいても0ポイントにしかならない。となると、ドライバーが1名消えた時点で、リタイヤせざるを得ない(走る意味がない)し、ただでさえ15台しかいないクラスから1台マシンが消えてしまう。
ドライバーの戦いでもあると同時に、メーカーやチームの戦いでもあるのだから、選手1名の責任があまりにも重すぎるようにも思えてならない。
グリッド降格やペナルティなどを与えたうえで、変更を認めるという選択肢を規定してもよいようにさえ思えてならないのだ。
混走レースは面白いけどわかりにくい
混走レースは、それによって面白さを見出している点もある。
速度域が違う車両がいるのだから、追い越しは必然的に発生するし、トラフィック的な観点も出てこよう。
そして耐久レースはドライバー交替が行われるものであるし、それによって駆け引きがあったり、ジェントルマンドライバーが活躍するレースもあるのは事実だ。
もちろんレースのすべてを伝えるのは、ワンメイクレースであっても不可能だ。
でも、日本で一番人気があって、盛り上がっているレースで、ちょっと中継がわかりにくいは、少しもったいないように思えてならないのだ。
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